「福祉の仕事」と聞くと、介護施設で直接介助をする仕事を思い浮かべる方が多いかもしれません。
けれど、福祉の現場には、利用者さんの暮らしを“道具”と“提案”で支える仕事もあります。
それが、福祉用具専門相談員です。
車いす、介護ベッド、歩行器、手すり、スロープなど。
福祉用具は、ただ便利な道具ではありません。立ち上がる、移動する、眠る、トイレに行く、家族の介護負担を減らす。
そんな日常の一つひとつを支える、生活の土台になるものです。
この記事では転職を考えている方や、福祉業界にまだなじみがない方にもわかりやすいように、福祉用具専門相談員の1日の流れを具体的に紹介します。
「営業っぽい仕事なの?」
「介護の資格がないと難しい?」
「人と話すのが好きなら向いている?」
そんな疑問を持ちながら読んでいただける内容です。
福祉用具専門相談員の1日は多くの場合、事務所での確認作業から始まります。
まず行うのは、その日の訪問予定の確認です。
新しく相談を受ける利用者さんのお宅へ行くのか、
すでに福祉用具を利用している方の点検に行くのか、
ケアマネジャーさんとの打ち合わせがあるのか。
1日の動きは、訪問先や相談内容によって大きく変わります。
たとえば午前中に新規相談が入っている場合は、事前にケアマネジャーさんから共有された情報を確認します。
利用者さんの身体状況、
住まいの環境、
介護しているご家族の状況、
困っている動作などを見て、「どんな福祉用具が必要になりそうか」を頭の中で整理しておきます。
ここで大切なのは、最初から商品を決めつけないことです。
現場に行ってみると、廊下の幅、玄関の段差、ベッドを置く場所、家族の介助のしやすさなど、資料だけではわからないことがたくさんあります。
訪問前には、カタログや説明資料、必要に応じて小さな見本品、メジャー、タブレット、契約書類などを準備します。営業車に福祉用具を積み込むこともあります。
福祉用具専門相談員は、ただ説明するだけの仕事ではありません。
現場で寸法を測り、使い方を説明し、安全に使えるかを確認し、利用者さんや家族が不安なく使える状態まで整える仕事です。
朝の準備が丁寧だと、その後の訪問も落ち着いて進められます。
反対に、確認不足のまま出発すると、必要な資料が足りなかったり、利用者さんの困りごとに十分応えられなかったりします。
福祉用具専門相談員の仕事は、人と話す力も大切ですが、それ以上に「相手の暮らしを想像して準備する力」が問われる仕事です。
派手さはありませんが、朝のこの時間に、その日の支援の質がかなり決まると言ってもよいでしょう。
訪問先では、まず利用者さんやご家族の話を聞くところから始まります。
「歩くのが不安になってきた」
「ベッドから起き上がるのがつらい」
「お風呂に入るのが怖い」
「介護する家族の腰が限界に近い」など、相談内容は家庭によってさまざまです。
福祉用具専門相談員は、その言葉を受け止めながら、どの動作で困っているのか、何が危険なのか、どこを支えれば暮らしやすくなるのかを一緒に探っていきます。
ここで重要なのは、福祉用具を売ることや貸すことがゴールではないという点です。
たとえば、歩行器を提案する場合でも、「歩ける距離を伸ばすため」なのか、「転倒を防ぐため」なのか、「家の中だけで使うのか、外出にも使うのか」で選ぶものは変わります。介護ベッドも、ただ寝やすくするためだけではありません。起き上がりやすさ、介助のしやすさ、転落のリスク、部屋の広さ、コンセントの位置まで考える必要があります。
利用者さんの中には、「こんなことで相談していいのかな」と遠慮される方もいます。
ご家族も、「本当は大変だけど、本人の前では言いにくい」と感じていることがあります。
だからこそ、福祉用具専門相談員には、やさしく聞き出す力が必要です。
専門用語を並べるよりも、
「朝起きるとき、どの動きが一番しんどいですか?」
「夜中にトイレへ行くとき、どこが怖いですか?」と、
日常の場面に寄り添って聞くことが大切になります。
訪問は、単なる商品説明の場ではありません。
利用者さんの暮らしを見せてもらい、家族の声を聞き、ケアマネジャーさんと連携しながら、その人らしい生活を続けるための方法を考える時間です。
福祉業界に興味がなかった方でも、「人の役に立つ実感がある仕事がしたい」「相手の生活に深く関わる仕事がしたい」と感じる方には、この訪問の時間に大きなやりがいを感じられるはずです。
利用者さんの状態や住まいの環境を確認したら、次は福祉用具の選定や提案に入ります。
車いす、介護ベッド、歩行器、手すり、スロープ、床ずれ防止用具など、福祉用具には多くの種類があります。
同じ「歩行器」でも、屋内向きのもの、屋外向きのもの、軽くて扱いやすいもの、安定感を重視したものなど特徴はさまざまです。
福祉用具専門相談員は、利用者さんの身体状況だけでなく、住まいの広さ、家族の介助力、生活リズムまで踏まえて選びます。
納品の日には、実際に福祉用具を設置し、使い方を説明します。
ここで大切なのは、「説明したから終わり」ではないことです。利用者さんに実際に使ってもらい、立ち上がりや移動、寝起きなどの動作を確認します。
手すりの高さは合っているか、ベッドの位置は使いやすいか、車いすのブレーキ操作は理解できているか。
少しでも不安があれば、その場で調整したり、使い方をもう一度説明したりします。
福祉用具は、正しく使えば生活を助けてくれますが、使い方を間違えると事故につながることもあります。
そのため、安全確認はとても重要です。
特に、はじめて福祉用具を使う方や、認知機能に不安がある方、家族が介助に慣れていない家庭では、ていねいな説明が欠かせません。
「このボタンは背上げです」
「ブレーキは移乗前に必ずかけてください」
といった基本的なことも、相手の理解度に合わせて伝える必要があります。
この仕事には、営業の要素もあります。
けれど、一般的な物販営業とは少し違います。
大事なのは、たくさん売ることよりも、その人の生活に合ったものを選ぶことです。
必要以上の用具をすすめるのではなく、本人の自立を支え、家族の負担を減らし、安全に暮らせる選択肢を提案する。
そこに、福祉用具専門相談員の専門性があります。
人に感謝される仕事がしたい方、生活に密着した提案がしたい方にとって、非常にやりがいのある場面です。
福祉用具は、納品して終わりではありません。
むしろ、使い始めてからが本当の支援の始まりです。
午後には、すでに福祉用具を利用している方のお宅を訪問し、点検やモニタリングを行うことがあります。
ベッドの動きに不具合はないか、車いすのブレーキは効いているか、歩行器の高さは合っているか、手すりの位置に問題はないか。
用具そのものの状態だけでなく、利用者さんの身体状況や生活の変化も確認します。
高齢の方の暮らしは、数か月で大きく変わることがあります。
以前は歩けていた距離が短くなったり、立ち上がりが難しくなったり、逆にリハビリによって動作が安定してくることもあります。
その変化に合わせて、福祉用具を見直すことが必要です。
今の用具が合わなくなっているのにそのまま使い続けると、転倒や事故のリスクが高まることもあります。
だからこそ、定期的な確認はとても大切です。
また、福祉用具専門相談員は、ケアマネジャーさん、訪問介護員さん、看護師さん、リハビリ職、住宅改修の担当者など、さまざまな専門職と連携します。
たとえば、訪問中に「最近トイレまで歩くのが不安そう」と気づいたら、ケアマネジャーさんに共有し、必要に応じて手すりやポータブルトイレ、歩行補助具の見直しを相談します。
こうした連携があるからこそ、利用者さんの暮らしを一人で抱え込まず、チームで支えることができます。
転職を考えている方にとって、この仕事の魅力は「人と関わる仕事」でありながら、「専門知識を積み上げられる仕事」でもある点です。
介護の現場経験がなくても、学びながら力をつけていくことは可能です。
福祉用具、身体の動き、介護保険、住環境、コミュニケーション。
覚えることは多いですが、その分、経験がそのまま提案力になります。
毎日の訪問の中で、「この人には何が本当に必要か」を考え続ける仕事です。
訪問が終わったら、事務所に戻って記録や報告を行います。
訪問時に確認した内容、利用者さんや家族の希望、用具の使用状況、点検結果、今後の対応などを整理します。
必要に応じて、ケアマネジャーさんに報告したり、福祉用具貸与計画に関わる書類を作成・更新したりします。
この時間は表に出にくい作業ですが、福祉用具専門相談員の仕事ではとても重要です。
なぜなら、福祉用具の支援は「感覚」だけで進めるものではないからです。
どんな課題があり、何を目的にその用具を使い、実際にどう変化したのか。
これを記録として残すことで、関係者が同じ方向を向いて支援できます。
記録が丁寧だと、次回訪問時の確認もしやすくなり、利用者さんの小さな変化にも気づきやすくなります。
夕方には、翌日の訪問準備をすることもあります。
新規相談の資料を確認したり、納品する用具の手配をしたり、営業車の積み込みを確認したりします。
ときには急な相談が入ることもあります。
「退院が決まったので、明日までにベッドを入れたい」
「家で転倒してしまったので、早めに手すりを相談したい」など、
生活に直結する相談だからこそ、スピード感が求められる場面もあります。
福祉用具専門相談員の1日は、決して単調ではありません。
事務作業、訪問、ヒアリング、提案、納品、点検、連携、記録。
さまざまな業務が組み合わさっています。
体を動かす日もあれば、じっくり話を聞く日もあります。
営業的な動きもありますが、根っこにあるのは「その人の暮らしを少しでも安全に、前向きにすること」です。
福祉業界に強い関心がなかった方でも、誰かの生活を支える仕事に価値を感じるなら、福祉用具専門相談員は十分に選択肢になります。
人と話すことが好き。
暮らしの困りごとを一緒に解決したい。専門性を身につけて長く働きたい。
そんな方にとって、福祉用具専門相談員の仕事は、想像以上に奥行きのあるキャリアになるはずです。
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詳細な講座の内容や日程もサイト内で確認できますので、ぜひチェックしてみてください。